非科学の子

　一体どうしてこんな短期間にここまでの急激な改善がなされたのか正直なところ何かあるのならわたしのほうが教えて欲しいくらいです。この半年間の間に何かされました？これまでのこの子のデータと比較してこれは少し信じがたい数字といえます。検体を取り違えたのではないかとそういう疑いも持ちたくなるくらいなのですが。何か、おかあさん、されたのでしょうか？
　小児科医がずっとしゃべり続けてるから、時々さも感心した風に頷きながらやっぱり神様はいる、不思議なことってあるって、頭を右に傾かせながらそんなことを考えてる。一個だけしかないキャラメルを自分ひとり、こっそり口に含ませてる子供みたいに一人でそんなことを考えてる。　
　何かされたんでしょうか？
　小児科医は同じ質問を何度も繰り返す。科学の時代に生きるわたしが科学の時代を担い続ける医師に非科学のことを話すのはきっと滑稽なんだろうな。そう思ってそれで曖昧に笑っていい加減なことを答えておいた。

　いると思えばいる。いないと思う人にはいない。空気の中にも光の中にも風の中にも木の葉にも建物の壁にも土くれにもそれからわたしの中にも。それでいいや。