たんぽぽの綿毛

 先週あの子が庭から摘んできたたんぽぽを玄関の花瓶にさしていたのが、いつの間にか気づかないうちに白いまん丸な綿毛になっていてすごく驚いた土曜日。ぷわぷわ飛んで行きそうな綿毛をそーっと家の外に出す。このまま部屋の中にいたんじゃ報われない。たんぽぽだってそんな無駄死には嫌に違いない。「ねぇたんぽぽ綿毛になってるよ」あの子にそういったら大慌てで走ってきて「だめだめそとにだしちゃだめ」「だけどお部屋の中でぷわぷわ飛んだらくしゃみがでちゃうよ。たんぽぽだってかわいそう」
 「○○くん、もっとたくさんたんぽぽを摘むの」草むしりと落ち葉掻きをしてるわたしの周りを飛び回りながらあの子が言う。「1本、2本、3本・・・ねぇほら9本」それからあわてて摘んだ花を花瓶にさそうと走っていった。「ねぇ○○くんのおうちはフラワーランドだよ。だってお花がいっぱいだもん」背中越しにおぶさるようにわたしの肩に腕をくるりと回して嬉しそうに言うあの子になんて答えていいのやら。他の雑草と一緒に根こそぎ引き抜いてしまおうと思ってた、たんぽぽたちもあの子のおかげでどうやら今日は難を逃れたみたい。「おいおいあのね世間の風は冷たいぞ厳しいぞ」あの子のほんわかした優しい人生観が誇らしくもあり心配でもあり。「少年、しっかりやるんだぞ」心の中でこっそり激励。