銀河鉄道の夜

銀河鉄道の夜 (宮沢賢治童話傑作選)

銀河鉄道の夜 (宮沢賢治童話傑作選)

   
 2年くらい前のクリスマスイブの夜、すっかり寝入ったあの子の枕元に「銀河鉄道の夜」と「星の王子様」2冊の本をそっとおいたんだった。翌朝あの子が目を覚ましベッドから抜け出した気配に階段を上がってゆくと、あの子は枕もとに置かれた2冊の本を投げ捨てて、ひどく悲嘆にくれた様子でことしはサンタさんこなかった、そう言ってさめざめと泣いていた。どうして?ここにこんなに素敵なプレゼントがあるよ。サンタさんのプレゼントじゃないの?そんなのいらない、おもちゃがいい。すっかり落胆しているあの子の姿にわたしもすっかり落胆してしまった。
 やっぱりまだこんな本は早かったのかな。トイザラスでおもちゃを買ったほうがよかったのかな。すっかり落胆してしまった。

 ここ数日あの子は眠る前に必ず一章ずつ銀河鉄度の夜を読み聞かせるようわたしにせがむ。たしかに、改めて読み返してみるとまだあの子の年齢ではこんな単語や言葉遣いは少し難しすぎるだろうなと思う。けれどあの子はまるで猫みたいに行儀よくわたしが読み聞かせる一語一句をじっと聞き入っている。おもしろい?うん。意味わかる?うん。難しくない?うん。たまには自分で読めば?ううん、よんでほしいの。

 胸がひたひたするように綺麗で青白く鬱蒼な優しさに満ちた言葉と世界観が、あの子のまだふわふわの柔らかい心にそっとしみていく。そんなことを考えながらそっと本を閉じ電気を消す。