優しいそぶり

　隣の席の男の人がつけてる香水の香りがちょっとセクシャルでキーボードをたたきながらも妄想しそうになる。セクシャルなのは香水の香りなのかそれともつけてる人なのかそれを考えはじめると困ったことになりそうだから気づかない振りしておく。
　会議室に飾られてた花がすごく綺麗で驚く。だけど不思議に何の香りもしない。すごく香りの強そうな花なのに。
　きれいな花を見るとなんだか泣きたくなる。お花屋さんの前を通るだけで涙ぐみそうになる自分には少しまいる。もてあます。だけどそれって悲しいのとも違う、感動してるのとも違う、なんだかどこから湧いてくるのかよくわからない涙。自分のそんざいのこんていをゆすぶられてるようなかんかくの涙。はは。難しくてしっくりこないからひらがなで言ってみる。綺麗なものは人を不安にさせる。多分。

　なんだか頭が痛い。そう思ってたらあの子がとことこやってきて「こんにちわ」「こんばんわ」「ありがとう」って、とても優しいそぶりで言った。「それは手話？」あの子は嬉しそうに笑って頷いた。「すごいね。教えて」それからわたしも嬉しくなって笑った。