ペンペン猫

yeup2005-10-24

 いつもの音楽教室の駐車場に車を止めようとしたらば、一足早く先客の白黒猫様がしゃなりと駐車というか駐留していらしたんで、さてどうしようなどと逡巡しつつゆるゆる今にもとまりそうなスピードで近づいていってみたら、おお白黒猫様が自発的にどいてくださり、あっぱれめでたく車をとめる。
ドアを開けて地べたに降り立つと、白黒猫様はお一人ではなく、すぐ脇の塀の上に灰色の品ぶった縞猫が一匹赤い首輪をつけてにゃぁってしなをつくってる。この場合のあかいはやっぱり赤いが似つかわしく紅いじゃないのね。変換ってめんどくさいにゃあなんて余談だけどねへへ。
 で、猫、互いに見つめあいつつわたしっていうこの無粋極まりない闖入者をちらちら横目で見やり、見やりながらも二人、いや二匹は多分恋仲これから一緒にそこのフェンスの隙間を抜けて向こうの家の庭を通り抜け、出たとこ勝負で道路を渡りどこどこまでも恋の逃避行ともに猫せんべいになる日までひげととひげ肉球肉球を絡ませ生きていこうじゃありませんか、ってそんなムードがどこそこ特濃無調整牛乳。
 はたと気づけば塀の上に立つ赤首輪猫の足元には無数の釘釘釘。塀の上には一面に釘釘釘が各々尖った頭を上にして埋め込まれているじゃありませんか。
 その恐ろしい塀の上を足元などこれっぽちも気にせずしゃらしゃらすまし顔で歩いてゆく赤首輪猫の手腕じゃなくて足腕に感服。それにしてもその塀の釘釘釘の恐ろしさ。そういえば以前にもこんな家を見たことがあった。釘釘釘ガラスの破片ガラスの破片ガラスの破片。きっと何度もドロボーに入られたのであろうなぁと想像同情申し上げつつも、それはあまりに心を寒々と凍りつかせる戦慄の光景なのであり、これではこの家に住む人々の心も寒く硬く、ドクターコパ的見地から言っても健康を害してしまうのではないだろうかなどと、釘などを埋め込んでまでも守らねばならぬ財など持たざるわたくしは、いらぬ心配よけいなお世話に身を焦がしつつ、君達の足元にそんな釘だらけの塀は似合わない。君達にはジャラジャラ鳴るぺんぺん草こそ似つかわしい。幸せににゃ。猫どもよ、さようなら。とかなんとか猫どもに完全無視されつつも人間としての威厳を一人保ちつつその場を去ったのだった。