スタンディングオベーション

金色の金曜日の夜、意外に近くにありながらこれまでほとんど知らなかった日帰り入浴施設へ。本当の温泉だったってことに驚き、低料金に驚き、いろんな種類のお風呂に驚き、露天風呂の気持ちよさに驚き、テラスから裸で見る夜景の美しさに驚き、げこげこ賑やかに鳴く田んぼのかえるに郷愁。薄い雲にかすむ丸い月にほぅっと吐息をつきながら、独り占めの露天風呂で縁の石に腕を伸ばして頬をつける。わたしったらきっと別世界に来ちゃったのね。色んなものが湯気で柔らかくかすんでいく。空を飛ぶ飛行機も、いつも明るく見える一等星も。
30分の約束もむなしくたっぷり1時間色んなお風呂を楽しんで、女湯の暖簾を押して出たわたしと男湯の暖簾を押して出たあの子たちの間に思ったとおりほとんど時間差なんてなかったみたい。「ねぇこんなのとっても30分じゃ足りないよね。お母さんだってきっとそうだよね。ってこいつご機嫌で色んな風呂はいりまくりだったよ。大慌てで服着て出てきたせいで、こいつ間違えて今日はいてきたパンツまたはいちゃったから家に帰ったら新しいのに着替えないとな」

それから帰りは馬鹿みたいに暗い山道に迷って狐に化かされちゃったのかなって笑いあう。お腹ぺこぺこになってわくわくしながら生まれて初めて入った「ザめしや」のシステムに若干戸惑いつつもお腹一杯食べすぎなくらい食べて幸せな気持ちで帰途につく。日帰り入浴施設もザめしやもブラボー。スタンディングオベーション