フェバリット

 写真だけだとなんだか遠くへいけそうな気がするけど現実はそうでもないのでまぁいいかと今日も麦チョコをお皿にあけてふたつ以上がくっついた塊を探す。見つけるとすごく嬉しい。ひとつひとつ歯でこそげとるようにそっとかじってはがしながら食べて、それから発泡酒をこくりと飲む。秋になったら遠くへ行くのだとなんだか毎年そんなふうなことを考えているよう。たくさんの秋。
 くっついた麦チョコがすき。

貧血

太るのは嫌だけどビールが大好きでどうしてもやめられないっていうのが目下の悩み。

「ふらふらしたりしませんか?動悸とか息切れとか」多少のふらふらにも、動悸にも息切れにもすっかり慣れちゃってて問診表にはきれいさっぱり健康状態問題なしみたいに書いておいたのだけれど、全部お見通し。医学ってすばらしい。
「貧血すすんでますよ。この数値は一応治療対象ですね。今はね、ちょっと痩せてらっしゃるようだけど、貧血を治せばもう少し栄養が取れて少しふっくらできますよ」なんて随分にこやかに優しげに諭すように血液検査の結果を説明する医者に曖昧な返事をしながら、「もう少しふっくらできますよ」なんて言われて「はい是非太りたいです」なんて応える女の人が一体この世の中にはどれっくらいいるんだろうって不思議に思う。痩せられるなら少しくらい貧血気味でもいいや、ってそんな考えの女の人ならごろごろいそうだけど。
会社に戻って「ねぇなに言われた?」って健康診断の話でひとしきり。「『眩暈動悸息切れ』って問診表に書いたら、今のその体重に負けないくらいの肺活量を身に着けることですね。貧血もないですし」って言われちゃったって笑ってる少し太り気味の女の子を見て、ああこの人って日常的に健康なんだなって思う。

「あのねぇ、あんたは少しくらいの体の不調は根性で乗り切っちゃうけど、普通の人にはそういうことはできないんだからね。他の人のことを何だこんなくらいで休みやがってなんて思ってちゃだめだよ。根性で乗り切れるのはあんたくらい。あんたは体力もないくせに根性だけはあるから始末が悪いんだよ」趣味が占いの整体師に散々説教されたのを思い出す。確かにね。根性もあります。だけど根性は半分。あと半分はただ単に鈍いだけ。なんだかどこかアンバランスに鈍い。

きのこの主張

会社のロータリーの真ん中の芝生の島のところに生えてるアイボリーのひょろりんとしたきのこがすごく気になる。食べられない。一目見ただけでそういう感じ。ひょろりんと細くて色も白くて傘も小さくてあんまり存在を主張していないけど、でもよく見てみると、意外にたくさん芝生の間から顔を出していて、で、こういうきのこが生えてるのってなんだか会社の品格としてどうなのかな?って少し思う。きのこぐらいはえててもいいじゃん!ってなんか言い切れないそういう感じのきのこっていうものが、世の中にはありますよね。うふふ。

意外に地頭的

運悪くちょっと値の張る買い物をしないといけなくなってしまった。
わたしってこう見えて、液晶画面ごしじゃ見えないだろうけど値切り上手。値切るの大好き。にこって笑って、対象の目を見据えて、んん〜これで?ん?いくら?ええ〜っと半端はいらないかな。ん? 3 ? 3 ? う〜ん? さん〜・・・?・・・だよね〜そうだよね〜やっぱりここは0だよね〜。端数はだめだよね〜とか。
ところが、狙っててもうほとんど心の中では決めてたものが、運悪く根性悪の他の営業が、わしわし横はいりしてきて他の人に先に売っちゃったりなんかして、担当の営業がお詫びの電話かたがた代替品をすすめてきたりなんかした日にはもう値切り魂全開。え〜もう心の中ではほとんど決めてたのに〜。でもまぁ仕方ないですよね〜。商売だし、早い者勝ちですもんね。即決しなかったわたしが悪いんだし・・・。でもやっぱこれはテンション下がるなぁ〜。う〜んどうしようかなぁ〜。どうします?やっぱそれってすみません料ってことで、もう一声あるって思っていいですよね〜。そうですよね〜。う〜んそういうことも含めてっていうならもう一回考えてみようかな〜・・・なんて。
地頭は転んでもただでは起きぬ、なんてことわざを思い出して、ええっ?わたしってなんだかあの悪名高き地頭みたい?って少し情けなさめ。

スタンディングオベーション

金色の金曜日の夜、意外に近くにありながらこれまでほとんど知らなかった日帰り入浴施設へ。本当の温泉だったってことに驚き、低料金に驚き、いろんな種類のお風呂に驚き、露天風呂の気持ちよさに驚き、テラスから裸で見る夜景の美しさに驚き、げこげこ賑やかに鳴く田んぼのかえるに郷愁。薄い雲にかすむ丸い月にほぅっと吐息をつきながら、独り占めの露天風呂で縁の石に腕を伸ばして頬をつける。わたしったらきっと別世界に来ちゃったのね。色んなものが湯気で柔らかくかすんでいく。空を飛ぶ飛行機も、いつも明るく見える一等星も。
30分の約束もむなしくたっぷり1時間色んなお風呂を楽しんで、女湯の暖簾を押して出たわたしと男湯の暖簾を押して出たあの子たちの間に思ったとおりほとんど時間差なんてなかったみたい。「ねぇこんなのとっても30分じゃ足りないよね。お母さんだってきっとそうだよね。ってこいつご機嫌で色んな風呂はいりまくりだったよ。大慌てで服着て出てきたせいで、こいつ間違えて今日はいてきたパンツまたはいちゃったから家に帰ったら新しいのに着替えないとな」

それから帰りは馬鹿みたいに暗い山道に迷って狐に化かされちゃったのかなって笑いあう。お腹ぺこぺこになってわくわくしながら生まれて初めて入った「ザめしや」のシステムに若干戸惑いつつもお腹一杯食べすぎなくらい食べて幸せな気持ちで帰途につく。日帰り入浴施設もザめしやもブラボー。スタンディングオベーション

週末

土曜日、アキレス瞬足のおかげか、運動会のかけっこであの子はトップでテープを切った。それなのにわたしときたら、あたふたビデオを構え、ああ間に合わない、あの子はどこどこどこなの?なんてやってるうちに、ビデオにも取り損ね、目でも見損ね、結局のところ1番のゼッケンをつけたお世話係の6年生に案内されて一番の旗のところに歩いてゆくあの子の後姿を見るのがやっと。あーがっかり。大丈夫かなって心配してたスタンツもびっくりするくらい見事にやってのけて、ああいつの間にあんなに倒立上手になったのかな、サボテンもブリッジもすごいすごいって大喜び。母だねぇ。一人息子がかわいくてたまらないんだねって、同級生の母に笑われる。

月曜日富士サファリパークへ。手から餌を食べるカンガルーの可愛らしさに感動。ポニーの頑丈そうな歯に恐怖。ワンちゃんふれあいの館のニオイに辟易。熊にはりんごをライオンには肉を、そしてわたしたちはバーベキューを。

検索ワードはいぼばっかりだけど、今日はいぼの話はなし。

駄目な考え

新入社員が入ってきてまだ日も浅いのに、もう来年度の採用予定者に通知を出す。就職が決まってからの一年間の学生生活ってどんな風なんだろう。安心?心置きなく遊べる?より研究に没頭できる?なんだか夢も希望なくなっちゃったみたいな気持ちになったりしないのかなぁと今日も駄目な考えにとらわれる駄目なわたし。なんか駄目。